M刑務所内の労役場で行う労役作業とは共同房(牢屋)での内職作業だった。
12畳(トイレ、流し台込みで)の舎房(牢屋)で4人が小机(ちゃぶ台)の前で薄っぺらい座布団の上に正座、安座で内職を時間中ただひたすら行う。
片立膝は勿論 乱れた姿勢での作業はNGだ。
「サルタ」と呼ばれた房の先輩 (たぶん20代)
そして白髪の老人
の2名で 刑務官から作業の指導を命じられたのはサルタだ。
サルタは「交談札」と書かれた手のひらサイズの細長い木の札
(黄色くペンキが塗ってあり公談札の文字は黒)
を持ちながら話しだす。
作業中に会話するときはこの札持たないとダメなんスよ
ココに見本があるので見ながら作って下さい
材料(紙)には裏表あるので注意して下さい
ノルマはありません。ただ不良品を作らないように注意してください
質問あるときはこの札もって「交談願います」って話しかけて下さい
トイレに行くときはドア左上の報知器ボタンをカッタン押してしてから行ってください
※映画「刑務所の中」より
後から先生(刑務官)が「2室報知器!」と聞いてくるので
(用便)終わりました!・・・と言って下さい
ため息ついて部屋=共同房(牢屋)を見回す。
部屋に時計は無い。
入口の鉄扉にはドアノブは無い。
(内側から開ける事を想定してない造り)
1月から6月まで表記されたカレンダーが貼ってある。
3番席99番よそ見すんな、手元集中しろっ!
すかさず若い刑務官に厳しい口調で注意される。
超ムカつく…
千代紙的な紙を3枚糊付けしてシールを貼る。
1枚作っただけで もう背中とお尻が痛い。
じっとしてられない。
製品もキレイに作れない。
時計が無いから時間経過の感覚もない。
さっき房に入れられたばかりなのに もう数十分過ぎた気分だ。
でも小机の上の俺が作った「製品」はまだ3.4個だけだ。
どの位 時間が過ぎたのか分からないが、
廊下の端から
「ギョ〜〜メ〜〜!キュ〜〜ケ〜〜」
(※訳 作業やめー!休憩ー!)
の大声が響く。
休憩ッスね。休憩中は普通に喋っても大丈夫ッスよ
前席に座っていたサルタが笑顔でふりかえった。
続く↓