M県S市w区の閑静な住宅街の外れに位置する
M刑務所。
外見は古い昭和のコンクリート3階建のビル、通称センター塔。
内部はドーナツ状になっており 建物の3階
1つしかない入口を左から2番目の12畳、
窓に鉄格子の部屋(雑居房)「2室」で俺は生活している。
(3階の全25部屋のうち労役は1室、2室に収監される )
5月31日に収監されて 今日は7月14日(水)
同じ日に2室に入って6月6日に独居に移って行ったカメイ(72歳、窃盗で罰金20万円分の労役40日)は7月10日の朝に出て行った。
朝食後 朝の労役作業中に 遠くの部屋で鉄扉が開く音とカメイの「称呼番号」を言った後出て行く声が聞こえたので 間違いない。
ちなみに俺は8月28日で90日の労役が満期で翌日29日朝が出所日だ。
まだまだ先の話だ。まだまだ先の話。
毎日毎日 部屋の入口、鉄扉の下に両面テープで貼ってあるカレンダーばかり見ている。
カレンダーは夕方の海辺(佐賀県)を撮影した写真カレンダーで右下に「矯正協会」と表示がしてあったと記憶している。
カレンダーの8月29日 にはボールペンで薄く印をつけてある。
俺が印を付けたのだ。
(ボールペンは母親にハガキを書くとき刑務官から借りた)
こんな事でもココでは違法行為だ。
でも細やかな抵抗。
一日何度もカレンダーを見ている。
カレンダーを見る事だけが
唯一、刑務所内での希望だった。
※カレンダー貼り替えは警務官立会いのもと模範囚の1番兄貴が行う。
※不定期で突然「ソウケン」と呼ばれる舎房内の抜き打ち検査があって
カレンダーに付けた印が見つからないかドキドキした。
続く