野良猫みたいに生きている(PRO

交通違反の罰金が払えず労役90日→労役終了後3ヶ月間ホームレス生活→その後色々の備忘録

労役と狸(タヌキ)先生

「狸」とはセンター棟で運動、入浴を担当する初老刑務官のニックネームだ。

既に出所したサルタによると 代々 労役達から「狸」と呼ばれているらしい。

 

 色黒で車だん吉に似ている。

眼光鋭い

身長 約170センチ、体重は90キロほど、

突き出たお腹の柔道家体型。

とにかくデカい声。

 

労役で収監された当初 大声で威圧してくる狸先生が怖くて苦手だった。

 

狸先生のエピソードはいくつかある。

 

そのひとつを紹介すると

 

7月後半 外運動の時間 

いつもの様に「檻」

(コンクリ壁で囲まれた狭く細長い独り用の運動場。床は土、天井には網、上から刑務官達が監視している)

 

で自由運動(30分体操しても檻の中を歩き回ってもストレッチしても良い。この時間に爪切りをする時もある)

 

をしていると 隣の檻に居る人に上から狸先生が話しかけている。

 

隣には懲役受刑者が居るはずだ。

 

(懲役と労役はお互いに顔を合わせないように
必ず片方が通り過ぎるまで 休めの姿勢で壁を向く決まり。)

 

「おい!サト-(仮名)  しばらくやな。頑張ってるな!」

 

「ありがとうございます」

 

「お前今年でいくつになったんや?」

 

「今年で65です」   

 

そか。お前と初めて会った時は俺もまだ現役バリバリの40代やったな。

お互いにいい歳やし

体大事にな。ここに居れば 何の心配もないからな。

 

「ありがとうございます。

オヤジさんも お体大事にして下さい」

 

「ん!」

 

ドラマのセリフみたいだと思った。

 

狸先生の年齢は不明だが仮に

60近いとして20年近く刑務所にいるのか…お互い。

 

そう言えばここは無期、長期受刑者が7割近くいる…とサルタが言っていた。

 

毎日変わらない刑務所の生活を20年近く過ごすのはどんな気持ちなんだろう。

 

サルタの別の言葉を思い出す。

「狸はうるさいし、面倒くさいやつなんだけど 人間味はあると思うんスよw」

 

30分の運動時間は終わり

整列、行進、運動靴の履き替え、人数の点検が終わり窓に鉄格子の共同房内で正座する。

 

「うがい、手洗い後 作業はじめぇぇ」

狸先生の号令。 鉄扉が閉まり

ガチャっと施錠する音と共に

我々は再び労役作業を始めた。