2017年8月初旬、
労役2室は4人から3人になっていた。
酒気帯びで労役60日のシラトリが
刑務所暮らしに音を上げてキブアップ→ヘルプミーのハガキを
東京に住む家族に出し
お姉さんが直接S市にやって来て検察に罰金を払い、
その足でM刑務所に迎えに来たのだ。
ハガキを発信してから結構日数が経っていたので
「もう諦めた。最後まで労役を完走するよ」
と強がっていたシラトリだけど、
刑務官(先生)の「確認するけど出たいか?」
の問いに
「はい!出たいです!」
と大声で答えて アッサリと出て行った。
「シラトリさん良かったね」
「お母さんとお姉さんに感謝しなきゃね」
「身体大事にね」
…と休憩時間に祝福していた俺たち3人だったけど、
夕食後の仮就寝の時間になると
「ヒロタカ(シラトリの名前) やっぱりギブッたね」
「毎晩イビキ煩かったな」
「賢くて考察力ある人だけど性格に難あったね」
…といっせいに悪口言い始めた。
まぁ 嫉妬だ。
1人減った共同房はすごく広く感じる。
その後 21時の就寝時間まで
新人入るかな?
先生達は交代でお盆休み入っているから
連休明けまで来ないんじゃないのかな?
と話していた。
事件は次の日に起きた。
「けーん よーい!」(訳・点検用意)!
1室で点呼をしてる。
担当先生の声じゃないな。
朝の点呼は扉が開くまで目を閉じて待機するのだが・・・
「おぉぃ!3番席ぃ…手を開いて膝の上におけよぉ!」
ハブヤが注意されてる!
しかも!ハブヤ…返事しない!
「聞こえないのか!お前だよ!お前!」
「…」
ココで初めて鉄扉が開く。
刑務官達が交代でお盆休みに入る為か
いつもと違う先生が朝の点呼に来た。
30代半ばだろうか?
痩せた小柄で銀縁眼鏡の男だった。
続く