5月末に交通違反の罰金が払えずM刑務所に収監されて約1週間が経過した…。
我々に刑務所での生活を1から教えてくれたサルタ先輩は前日で140日の労役を終え本日出所する。
朝食の時に「あれ?朝飯食わないの?」とイワシダが聞く。
サルタは笑顔で
「俺、出所日の朝飯は食わないってずっと前から決めていたんですよ…朝飯は(刑務所の正門前にある)ローソンでコーヒーとタマゴサンド食べますよw」と答えた。
なるほど…確かに。グッドアイデアだ。
(俺も出所する時はマネしよう)
コンビニの朝飯なんて たかが知れている。
…でも世間から隔離された我々労役囚にとって 味は格別に違いない。
ましてサルタは140日刑務所にいたのだから味は格別だろう…。
釈放される日 作業はもう無い。
朝の点呼、材料入れは通常通り行い 後は部屋の奥で窓側を向いて正座で静かに待機して「お迎え」が来るのを待つ。
(事前に 寝具の白物は外し、舎房着、食器等の荷物はまとめて置く)
間も無く いつもと違う刑務官が「サルタ…行くぞ❗️」と呼びに来た。
「行くぞ❗️」…か。
羨ましい。
寝具、荷物を自分で部屋から出す。
1番兄貴(掃夫の模範囚)がそれらを台車に乗せる。
「お世話になりました」サルタは小さく挨拶して部屋を出る…「11番出ます」それがサルタの声を聞いた最後だった。
サルタが抜けた直後 担当先生から席を詰めるよう指示があり
1番席 カメイ
2番席ネコタ(俺)
3番席イワシダ になった。
12畳の共同房 一人分のスペースがポッカリ空いた。
「部屋 広くなりましたね」休憩時間にイワシダが呟く。
本当だ 1人いなくなっただけで こんなに広くなるんだ。
なんだか 取り残された感じになって 少しだけ寂しくなった。
俺も早くココから出たい…。