面会で労役作業から抜けたイワシダは10時から始まる室内運動の途中に戻ってきた。
運動が終わって休憩時間を告げる刑務官の号令がまだ廊下に響いている中 興奮気味に話しはじめる。
俺、今日で釈放っす!
叔母さんが 残り日数分の罰金を今から検察に行って支払ってくれる事になったんッスよ!
ちなみにウチの叔母さん双子で2人とも来てくれたんですよ!
あと今日ココ(M刑務所)で誰か死にましたね・
シーツがかけられたストレッチャーが面会部屋すぐ側の廊下にあって家族らしい人が着てました
ジロジロ見んな!って先生に言われたけど やっぱり見ちゃいますよね
短い間でしたがお世話になりました。
FBで探して連絡します
と一気に話した。そして、
「これ、使って下さい」と貰ったばかりのチリ紙を2分割して
俺とカメイに巡回中の刑務官の目を盗んで差し出した。
釈放!出所!羨ましい!
休憩が終わり、作業が再開、
昼のお茶配当、食事→カラ下げ。
そして午後の作業が12時半から始まってすぐ
廊下で「担当先生」の無線連絡が聞こえ、足音。
そして舎房の鉄扉が開く。
見慣れない刑務官も一緒だ。
イワシダッ 確認取れたんだけど出たいか?
はい!出たいです(大声)
そうか
担当先生は感情もなく鉄扉を閉め、
数分後 台車を押した掃夫(懲役の模範囚)の
「1番兄貴」
(我々が勝手につけた名前)」を連れて来た。
白物外して布団だせ。
食器も 官本先に出せよ。
ヨシ。袋持って出ろ!
※白物(シーツ、襟布、枕カバー)
※袋(官服、タオル、歯ブラシ、コップが入っている茶色い紙袋)
イワシダはハイ!ハイ!言いながらバタバタと
用意し、「5x番出ます!」と慌ただしく出て行った。
カメイ老人が
アイツ、「お世話になりました」も言わず出てったな。 俺FBとかやってないのに
と苦笑いしながら小声で呟いた。
2室は俺とカメイの2人になり、部屋はますます広くなった。
続く
※追記↓ (土日祝と年末12/29~1/3までは
検察庁(の会計)が休みなので現金を持参しても釈放されない(はずです)