イワシダが出所して 2名になった センター塔3階2室。
午後の休憩中 カメイが
「共同房は2名にしないから オレか猫田さん どっちかが 独居か1室に移動だな」
「俺が独居に移動だな。1室4人だし、俺の方が先に(7月10日)に出所だし 多分だけど」
「2名にしておくと喧嘩になった時に 止めたり先生を呼んだりするヤツがいないし 他にも色々あるんだよ」
とカメイが言い出す。
「マジすか?カメイさん詳しいッスね。」
俺が聞くと
「まず…ね。人から聞いた話だよ」と自称 岩手出身のカメイは照れくさそうに答えた。
そして…
「けーしゅーりょーぉぉさぎょーかいしーぃぃ」
(休憩終了!作業開始ぃ!)
の号令直後 担当先生が台車を押した1番兄貴を連れてきて
「カメイぃ。材料もって独居に移動して。」
とあっさりとした口調でカメイを連れて行った。
カメイは「まずまず 元気で」と言い残して
布団と食器、茶袋を持って 出て行った。
ついに2室は俺1人になった。
作業後の口上
「2室●名です。公談札の貸与ありがとうございましたっ!」は1名の時は言わなくても良いよ と 若い刑務官に教えられる。
労役で収監されてひと月。ついに雑居房はオレ1人になった。
広い部屋で1人で夕飯。
となり1室4人の談笑が半分しか開かない鉄格子窓の外から聞こえてくる。
不思議と寂しさは無い。
ただ ただ 18時に半日遅れのNHKラジオニュースを聞き、
その後 つまらない地元FM局の番組を聞き、
読売新聞を15分の所定時間内で読み、
布団を敷き、そのまま横になる。
いつもの日課を消化する。
刑務所の夜は相変わらず長かった。
寝すぎで 背中が痛いので 何度も起きてしまう。
起きて外を見ていると注意されるので
何度もトイレに行くふりをした。
続く