7月も後半 「2室」に新人が入った。
M刑務所で労役が新たに収監されるのはだいたい水曜日か木曜日。
新人はシラトリ
45歳 飲酒運転で罰金30万(労役60日)
中肉中背 銀縁眼鏡 の元ダンプ運転手
サギミヤ
41歳 無免許
3年間免許の更新をしないまま原付を運転
(古い原付バイクのブレーキランプの球切れでパトカーに止められ整備不良
→免許の更新切れ(無免許が発覚)で罰金20万(労役40日)
小柄で爆笑問題の太田似で無職。
の2名。
どちらもクセがなく共同生活に支障がないのが幸いだった。
ある日 午後の休憩時間に 廊下の奥から台車のキャスター音。
隣の部屋でビニール袋の音、そして
「ロールケーキ…」と声が聞こえる。
そして若い刑務官が突然
「はい!ロールケーキ」
と1人1本ヤマザキのロールケーキを格子窓下の配膳台の上に置いていった。
我々は少し混乱する。
何でこのタイミングでロールケーキ?
このロールケーキはいつ食べるの?
1人1本は多いよね?
休憩時間 あと数分しか無いよね?
夕食後までとっておいていいのか?
俺は報知器をカッタンと押して刑務官を呼ぶ。
「先生 このロールケーキいつ食べるんすか?」
「今すぐ食べろ!時間ないぞ!」
俺たちは慌ててお茶も無いままロールケーキにかぶりついた。
1人1本は多いと思っていたが 甘いものに飢えていた為か意外と食べれたし、物凄く美味かった。
ビニールは作業再開した後「1番兄貴」が 回収していった。
それにしても あのロールケーキは何だったのだろう?
数日後 謎はあっさり解けるのだけれど
この時は疑問だらけだった。
※年イチで行われる
ロールケーキが配られるらしかった。
刑務所暮らしで1番の驚きが
このロールケーキの一件だった。
続く