M刑務所の消灯時間は21:00で起床は6:50。
この間 トイレ以外起きてはいけないし、
顔を手で覆うような仕草も禁止だ。
眼鏡も枕元に置く事は許されず
自分の棚に置かなければならない。
消灯時間から起床時間までの間は水洗の使用は禁止。
トイレの水はあらかじめバケツに水を汲んでおいてそれを使う決まりだ。
平成27年の8月後半は冷夏だったので比較的過ごしやすい日が続いていて
この夜もすぐに眠れるハズだったが・・・眠れない。
同室のブーちゃんとデカパンが消灯時間を過ぎても小声で話していて
俺が(刑務官に気づかれないかと)気になって寝むれず、
やっと静かになったと思ったら
今度はブーのイビキがうるさい。
ここ(刑務所)の眠れない夜は異常に長い。
眠れないのに横になっていると背中が痛くなるので
トイレに行くふりをして何度も起きて窓から外を眺めた。
はるか遠くにパチンコ屋の電光掲示板が小さく光って見えるので
まだ閉店前(23時前)だ。
出所したら行ってみようかな。
・・・なんて布団の中で
考えていたらいつの間にか眠っていた。
…夜中に起きる。
今は何時だ?もう明け方だろうか?
消灯時間に聞こえていた鈴虫の鳴き声は聞こえない。
ブーのイビキも少し音量が落ちている。
トイレに行くふりをして起きる。
ヤカンの番茶?ほうじ茶?を湯飲みで一口飲んで窓の外を見る。
パチンコ屋の電光掲示板は消えている。
23時は過ぎている。
真夜中だろうか?もうすぐ夜が明けるのだろうか?
遠くの廊下で足音が聞こえたので布団に入る。
見回りの刑務官が早足で通り過ぎる。
ドーナツ状の3階を1周するのは大体10分位だろうか?…とぼんやり考えていた。
ブーが起きてきた。トイレか。
フーフー独り言を言いながらトイレに入る。
4番席はトイレの真横なので 薄い壁越しに
小便が便器の水に当たる音が聞こえて不快極まりない。
でもこれは仕方がない。
ウトウトしてきた。
…起きる。…まだ暗い。
でも体感的にもうすぐ夜が明けるはず。
ブーが放屁する。
放出するガス量は人並みなのだろうが
太っているので肛門周りの肉が振動して とても不快な音を出す。
ブーブークッションの原理だ。
「ブーッ!」より「ベチャベチャッ!」に近い音だ。
人に説明するのは難しいがニュアンスだけ伝わってくれればいい。
隣で寝ている黒いおじさんが 何度もため息をつく。
放屁の音が不快なのか?
出所後の生活が不安なのか?
夢を見ているのだろうか?
デカパンもトイレに起きる。
明るくなって来ると 大体3時50分で、
外から
お茶を運ぶ台車の音が聞こえると6時過ぎ、
朝食を運ぶ台車の音が聞こえると6時半前後の筈だ。
遠くの廊下から足音が聞こえる。
靴底がキュッキュいっているので 前とは違う刑務官が巡回している。
布団の中から見る窓の外は真っ暗で
夜はまだ開けてこない。
辛い労役生活もあと少しで終わります↓